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日弁連総第85号
2003(平成15)年2月18日
高知赤十字病院
院長 開發 展之殿
日本弁護士連合会
会長 本林 徹
勧告及び要望
第1 歓告及び要望の趣旨
当連合会は、岡本 隆吉氏外179名から、貴院が法的脳死診断に先立つ臨床的脳死診断において無呼吸テストを実施したこと、また法的脳死判定において無呼吸テストを最後に行なわなかったことは人権侵害であるとの申立を受け、調査を行った結果、人権侵害の事実を認めたので、貴院に対し下記のとおり勧告するとともに、今回の調査に対する貴院の対応等も踏まえ下記のとおり要望する。
記
無呼吸テストは、治療手段ではなく、他の脳死確認のテストと比べて身体への侵襲程度がはるかに大きく、不整脈等を生じさせる危険を有するほか低酸素血症を来たす危険性も存するものである。そうであるからこそ、「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(以下「ガイドライン」という。)第4は、ドナーカ―ドの有無を把握する前になされる臨床的脳死診断においては、無呼吸テストを除外すると定めており、「臓器の移植に関する法律施行規則(平成9年10月8日厚生省令第78号)第2条3項は、意思表示確認後に厳格な手続きで行う「法的脳死判定」においてすら、深昏睡・瞳孔散大・脳幹反射の喪失・平坦脳波を確認した後の最終段階に、はじめて無呼吸テストを実施できると定めているのである。
貴センターは、こうしたガイドラインと規則の定めを無視ないし失念し、1999年2月26日午後8時13分から開始された第1回の「法的脳死判定」より8時間も前の極めて早い段階において、無呼吸テストを行ったのであり、その必要性・合理性を認めることはできず、患者の身体への侵襲行為をなしてその人権を侵害したものと言わざるを得ない。
さらに、その後行なわれた法的脳死判定においても、無呼吸テストについては他のテストがなされた後になすべきところ、それに先立ち同テストを行なったものであり、これも患者の人権を侵害したと言わざるをえない。
よって、今後なされる臓器移植手術においては、ガイドライン及び施行規則を厳格に遵守し、法的脳死判定に先立つ臨床的脳死診断において無呼吸テストを行わないこと、また、法的脳死判定において他の無呼吸テストがなされた後に無呼吸テストを行なうよう勧告する。
貴院においては、ドナー家族の意向により、第2回の法的脳死判定終了時期を公開せず、また当連合会人権擁護委員会の事情調査に対する協力依頼に対しても、すでに提出した資料のみの送付で足りるとの判断のもと、面談を拒否している。
しかしながら、かような対応は「判定が臓器保護のために安易に行なわれるとの不信を生じないよう医療不信の解消および医療倫理の確立に努める」との臓器移植法制定時の付帯決議の理念にも反するものである。
よって、今後なされる臓器移植手術における情報公開の範囲については、救命措置の内容・脳死判定手続等を含む移植経緯について、国民の信頼を得べく、可能な限り充分な説明を行い、情報を開示するよう要望する。
第2 勧告及び要望の理由
別紙調査報告書のとおり。
以上
2003年1月
日本弁護士連合会
人権擁護委員会
別紙のとおり被申立人に対し勧告及び要望を行なうことを相当と認める。
第2 申立の趣旨および理由
- 申立の趣旨
被申立人は、同病院勤務医師多数によって以下の違法行為がなされたにもかかわらず、その違法性を認めず、もしくは軽視して、臓器提供患者の人権を著しく侵害したので、同事実を確認し、ここに警告を発する。
(1)1999年2月22日23時09分、臓器提供者となる患者(以下、患者という)が救急車で搬入され、救急医1名、脳外科医2名の専門医が診察しながら、直ちになすべき応急処置をなさないでCT検査を施行して病熊を悪化させ、さらには救命の可能性を追求しようとせず、家族に 「切迫脳死の状態」という虚偽の説明をなし、同時に心停止が生じた場合に蘇生行為を行わない方針を述べて承諾させ、救命治療を放棄した。
(2)救命治療を放棄した方針の下で、患者をICUにではなく低い医療レベルのHCUに入院させ、家族への説明では「病状が少しでも改善すれば検査、そして手術」と述べながら、同説明をなした脳神経外科部長はすでに帰宅していたという背信行為を行った。
(3)家族への説明において、医師の認識として救命の可能性が僅少であっても、手術によって血腫(6cm×4cm×5cm)の除去が不可欠であり、かつ、これに成功しても植物人間の可能性もあること、しかし、手術なしでは脳死への過程を進まざるをえないこと、等の説明をなさず、一方的に 「切迫脳死」との虚偽判断を示し、家族に手術か否かの選択肢を与えなかった。これは、インフオームドコンセント違反であり、家族の決定権を侵害した。
(4)同月25日12時、臨床的脳死診断のための判定テストをなしたが、2月22日、23日、24日とそれぞれ中枢神経抑制剤フェノバール・ビタールを投与し、その影響下にある事を知りながら、臨床的脳死診断のための判定テストをなし、かつ、患者の容態悪化を招く無呼吸テストを行ったが、いずれも、臨床的脳死診断の時期及び方法に違反して患者の容態を悪化せしめた。
(5)同25日19時15分脳死判定委員会が開催されたが、同判定医2名のうち1名は前第―、第二の行為をなした同―医師が就任し、脳死判定は 「原患者に対して行いうる全ての適切な治療を行ったとしても回復の可能性がない」(規則2条)との認定判断をせずに判定作業に入り、極めて不公正な方法をとった。
(6)同25日20時13分から第1回法的脳死判定が開始されたが、規則で定められた脳波測定感度を満たさずになされ、かつ、無呼吸テストを最後にまわさずになし、容態を脳死ヘ促進する違法行為がなされた(規則2条3項違反)。
(7)同26日12時58分から感度違反のもとに脳波測定をなし、その誤ったデー夕により平坦と説明し、かつ、無呼吸テストを行ってさらに容態を脳死へ促進した。
(8)同27日11時40分から17時45分まで第1回法的脳死判定がなされたが、実に6時間5分に及び、その間規則に定められた感度は3分間づつ数回のみで手順に違反し、かつ、中枢神経抑制剤の影響がないとの確認もされないままなされているにもかかわらず、法的脳死との判定がなされたが、これはデータ操作による違法な脳死者を作りあげたものである。
(9)同28日15時07分から臓器摘出が開始されたが、患者の主治医が摘出に関与し、かつ、摘出中血圧が120から140、150と上昇し、患者はこの血圧の上昇とともに手足を激しく動かす動作をなし、やむなく麻酔ガスを投与してやっと臓器の摘出がなされたが、この事実は脳死に至っていない患者から臓器を摘出した疑いが強い。
-
(1)はじめに
1999年(平成11年)2月22日から同月28日までの間、非申立人病院において脳死による臓器移植が執行されたが、同経緯のなかで人権侵害行為がなされた。大きくは次の3点に分類される。
第1点は、救命治療の放棄である。患者が救急車で搬入されたとき、真っ先になされなければならない気道確保の気管内挿管と、血圧降下剤の投与をなさずして、CT検査をなし救急治療のイロハといわれる初期治療の放擲により患者の病状を悪化させ、かつ、唯―救命の可能性のある頭部手術による血腫の除去という方針をとらず、救命治療放棄をなした。
第2点は、救命よりも臓器移植へ関心が集中したことにより、早く臓器摘出ができるよう、規則に定められた脳波測定感度に違反して早々と脳波平坦との判断を行い、さらに規則に違反して無呼吸テストを行い、患者をして脳死へ病態を進行させ、さらに、何度も何度も脳死判定をくりかえし、脳波平坦というデータをとるために数時間に及ぶ検査をなして患者をして脳死に陥る行為をくりかえした。この結果による脳死判定は脳死者たるデータ作りというべきであり、作られた脳死者というべきである。
第3点は、患者は臓器摘出時に脳死に至っていなかった疑いが強い。臓器摘出のメスを入れた段階で血圧が120、140、150mm/Hgと上昇した事自体、脳機能が残存していた事を強く推認させ、かつ、麻酔ガスを使わなければ摘出できなかったことは「ラザロ徴候」といわれる手足の動きにとどまらず、激しく手足が動いたためと推認され、脳死の要件たる「全脳の不可逆的機能停止」には至っていなかったと考えられる。
(2)救命治療の放棄もしくは怠慢 ―争点1―
.@最初の6分間の医療過誤
被申立人病院には救急医1名、脳神経外科医2名(内1名は部長)が待機し、病院到着後直ちにCT検査をしているが、この処置は誤りである。
作業部会の報告書(甲第3号証)2頁では 「来院時、痛み刺激で上肢を伸展させる反応が残っていたが、瞳孔は正中固定で不同(右4mm、左7mm)であり対光反射は認められず、呼吸は下顎呼吸であった」とあり、救急隊の血圧測定では「BP219/72」という高値を示している。下顎呼吸をしているのであるから、まず気道確保のために「気管内挿管をしてAMBUバック(手動で酸素を送る)で換気をする」(甲第1号証の1)のが第一の処置で、さらに脳内出血は当然に疑われる状態であったから再出血を防ぐために血圧降下剤「アダラート」を投与しなければいけない(甲第1号証の1、2頁)。
ところが、この当然の処置をなさずにCT検査を行なったため全身痙攣(おそらく再破裂−但し、確認されていない)を発し、自発呼吸消失,両側瞳孔散大という悪化をもたらした。
専門医が3名も立会いながら、この事態を生じさせたのは医療過誤と評価される(甲第2号証)。
.A「切迫脳死」という虚偽の宣告
切迫脳死という言葉が厳密にいかなる状態を意味するかは、確定はされていない。しかし、その当時に一般的に使われている意味によって使用すべきであり、切迫脳死とは正に脳死になる寸前の状態であり、尿崩症が生じた頃とされる。本件では24日の12時頃に尿崩症が生じており、切迫脳死というのであればこの頃である。
本件では22日の23時15分全身痙攣当時に「切迫脳死」と家族に宣告しているが、治療を開始したばかりの時点であるにも拘らず、このように説明していることは、担当医師(新聞報道では脳外科部長)が救命など考えていないことを示して余りある。
しかも、同医師は家族に「蘇生をしない処置(通常心停止のときに心マッサージなどをして蘇生の努力をすることを、予め、しないという方針を出すこと)を述べて、切迫という形容詞がついていても「脳死」という言葉を聞かされてあきらめさせられた家族に、さらに「蘇生しない処置」まで承諾させている
(甲第8号証の7)。
これは明らかに、この早い段階ですでに救命しないという医師の方針を宣告し、徐々に脳死に至る方向を決定しているものと言える。これは正に救命治療の放棄である。
B有力な選択肢として存在した手術の非実施
重症度5とは 「深昏睡状態で除脳硬直を示し瀕死の様相を示すもの」(ハントとコスニックの分類、甲第1号証の1)であるところ、患者は痙攣を起こしているので 「深昏睡」ではない。
3月15日の記者会見でも「除脳硬直」は報告されていない。
したがって、患者の状態は重症度4「混迷状態で、中等度から重篤な片麻痺があり、早期除脳硬直および自律神経障害を伴うこともある」に該当すると推認できる。
ところで、患者が搬入された段階で重症度の正確な判断は困難であり、もっとも妥当な方針は「マニトールやグレセオールなどの抗脳浮腫剤の投与や脳室ドレナ―ジなどの治療を行い、改善を待ち手術を施行する」ことにある(甲第1号証の1)。
本件でも、家族への説明で「症状が少しでも改善すれば検査、そして手術」と述べており、現に23時40分には自発呼吸が発生し改善されているのであるから、右説明のとおりに実行すべきであるが、なんら積極的対応はなされず、既に述べたように、家族に右説明をした当の医師は帰宅していたという背信行為をなしている。
(3)脳死判定手順違反による脳死者の作出 ―争点2―
@法や規則遵守の意義
「脳死」を人の死と認めるのは臓器移植法に定めた要件を充足した場合のみである、この法律の効力として人の死としたものであって、法律によって作られた死である。したがって、法の定めた要件に違反する場合には「人の死」であるとは認められない。
また、人の死と認められるための脳死判定基準、及び、その手順は単なる形式ではなく、脳死者となる患者に危険を及ぼさないようにするため定められているのであるから、これら規則や手順の違反は即ち人権侵害を構成する。
A規則等に違反し患者をして脳死者にならしめた。
2月25日12時、臨床的脳死判断のための判定テストをなしたが、2月22日、23日、24日とそれぞれ中枢神経抑制剤フェノバールピタールを投与し、その影響下にある事を知りながら、臨床的脳死判断をなし、かつ、患者の容態悪化を招く無呼吸テストを行ったが、いずれも、臨床的脳死判定の時期及び方法に違反して患者の容態を悪化せしめた。
また同25日19時15分脳死判定委員会が開催されたが、同判定医2名のうち1名は前第―、第二の行為をなした同―医師が就任し、脳死判定は「原患者に対して行いうる全ての適切な治療を行ったとしても回復の可能性がない」(規則2条)との認定判断をせずに判定作業に入り、極めて不公正な方法をとった。
同25日20時13分から第1回法的脳死判定が開始されたが、規則で定められた脳波測定感度を満たさずになされ、かつ、無呼吸テストを最後にまわさずになし、容態を脳死ヘ促進する違法行為がなされた(規則2条3項違反)。
同26日12時58分から感度違反のもとに脳波測定をなし、その誤ったデー夕により平坦と説明し、かつ、無呼吸テストを行ってさらに容態を脳死へ促進した。
同27日11時40分から17時45分まで第1回法的脳死判定がなされたが、実に6時間5分に及び,その間規則に定められた感度は3分間づつ数回のみで手順に違反、かつ、中枢神経抑制剤の影響がないとの確認もされないままなされているにもかかわらず、法的脳死との判定がなされたが、これはデータ操作による違法な脳死者を作りあげたものである。
(4)患者は臓器摘出時脳死に至っていなかった疑いが強い。 ―争点3―
@臓器摘出時に血圧上昇
3月15日の記者会見において、2月28日15時07分からの臓器摘出行為時に、患者の血圧が「120から140、150と上昇」という事実がはじめて明らかにされた。脳死者と認められた者について、その臓器摘出時の手足等の動きは脊髄反射によるものといわれているが、血圧の上昇については右説明で足りるとする説と、血圧について脳幹がコントロールしているので脳幹は生きている(つまり脳死ではない)との説がある。
そして、問題は、この重要な問題につき何ら明確な説明がなされないまま脳死をもって人の死と定め、脳死者からの臓器摘出がされていることにある(甲第11号証関係)。脳死とは「全脳の不可逆的機能停止」との定義を我が国では与えているが、脳幹が生きておれば脳死ではない。さらに一言すると、これらの問題について、「生きかえらないから摘出してもよい」という議論は本末転倒している。生きている人からの臓器摘出なのかどうかという根本問題と、生きている場合患者はその痛みを感じているはずであるという脳外科医の有力な見解も存在するのである。
本件の場合、脳死判定に至るその手順は誠に違法行為の連続であり、本件患者が正しく脳死者であったのか否か自体が大きな疑惑の下にある。この問題は激しく手足を動かす問題とも関連する。
A麻酔ガス投与ではじめて摘出できた。
脳死者からの臓器摘出の現場に立ち会った人ならともかく、それ以外の人は、臓器摘出の時に麻酔をかけると聞けば驚愕するにちがいない。しかし、本件高知赤十字病院では、この麻酔ガスがかけられてはじめて摘出がなされた。この点は詳しい事実がまだ明らかにされていないが、麻酔をかけてはじめて摘出できたという事から合理的に推認すれば、摘出のためにメスを深く入れたとたん激しい手足の動きが発生したとみるべきである。
「ラザロ徴候」という言葉があり、脳死者が摘出のときに手足をゆっくり動かす(この名前は両手を胸の前におがむようにゆっくりまげた姿からきている)ことが報告されている。
しかし、ゆっくり動かす程度であれば、麻酔をかけなくとも臓器摘出はできたはずであり、本件では麻酔が必要であったことから、右の「ラザロ徴候」どころではない手足の激しい動きがあったものと推認され、本件では患者は脳死者になっていなかった疑いが極めて大きい。
第3 調査方法
1 申立人との面談
2 被申立人に対する面談要請とそれに対する回答各1回(面談拒否と資料の送付)
3 委員間での協議
当委員会が、関係者からの事実聴取、提出された資料(末尾に目録添付)、報道機関による報道等に基づき認定した事実は、以下のとおりである。
2月22日 本件患者が夕方から気分不良を訴える。
20:00頃 自宅で頭痛、吐き気を訴え、自宅にて様子をみていた。
20:00過ぎ 隣の部屋にいた夫に「救急車を呼んで。」と言い、倒れる。
22:12 救急車を要請し夫は患者を自家用車に乗せ大通りへ向かった。
22:34 救急車へ患者を乗せかえるが、その時意識はなかった。
救急隊からの病院への報告は「JCS200、血圧219/72mmHg、脈拍69/分、
SaO2100%で瞳孔右4mm、左6mm、対光反射なし」とのこと。
23:09 病院到着。
初診時、JCS200、痛み刺激に対し上肢を伸展させる除脳硬直様動きあり、左右差無し。
下顎呼吸気味だが換気は十分。瞳孔右4mm、左7mm・対光反射無く正中固定。
血圧は自動血圧計では測れず収縮期190mmHg以上。
23:13 頭部CT撮影。
23:15 CT室とり救急外来に戻った時、全身痙攣。
ディアゼパム10mgを静注し気管内挿管を行い人工呼吸開始。
そのとき瞳孔不同無くなり、両側瞳孔は散大。
この時点でHunt&Kosnik Grade5、
WFNS GradeV、
Fisher Group4であった。
マニトール300ml急速輸液を開始。
23:30頃 脳外科医師から家族に以下の説明がされた。
・クモ膜下出血と脳内出血で恐らく原因は脳動脈瘤破裂と思われます。
・本来なら脳血管撮影→動脈瘤があれば手術になりますが、両側瞳孔散大で、対光反射なく、
最も重症のクモ膜下出血で、今のところ検査→手術の適応ありません。
・しばらく保存的に治療し症状改善の徴候があれば検査になりますが、
その可能性は非常に少ないと考えます。
・今は切迫脳死の状態で非常に厳しい状態です。
23:40 HCUの個室に入院。
除脳硬直様・瞳孔不同なく両側散大・対光反射無しの状態は続いていた。
自発呼吸は再び出現していたが弱く呼吸器での補助が必要。
SIMV500ml、呼吸回数10回/分、PEEPO、Pressure
Support20mbarで換気。
マ二卜―ルに引き続きリバウンド防ぐためグリセオール20ml/時間で脳庄低下をはかる。
フェノバール1OOmgを筋注した。
2月23日
03:00頃 尿量が上昇するが血圧徐々に低下し、自発呼吸が消失した模様で、瞳孔両側散大、左右不同なし。
以降瞳孔に関しては全経過同じでGCSはE1MVto
10:00前 血圧65/40mmHg、脈拍95/分に下がり、
救急部医師よりご主人へ「あと2時間くらいしか持たないかも知れません。」と話すと、
ご主人より救急部医師に臓器提供意思表示カード、アイバンク登録カードが提出される
(この時腎バンクカードが見当たらないが登録していたはずと知らされる)。
救急部医師はそのカードを西山医師の所に提出。昇圧剤ドーパミン4γ_(μg/Kg/hr)を開始。
12:00 脳波測定開始
14:23 脳波測定終了:脳波は殆ど平坦だがVbとはいえない。
14:53 家族に対し、心停止後の腎臓提供について話を聞くことができることを説明し、
家族がコ―ディネータの説明を聞くことを希望。
17:25 西山医師より警察署へ連絡し、心停止下の腎提供に際し検視の必要性の有無について問い合わせ。
17:50 コーディネ―タ2人から主治医の西山医師、婦長の同席の下、
患者さんのご主人、娘さん1人に心停止後の腎移植と角膜移植の話をする。
18:00頃 体温40.2℃まで上昇。冷水にて胃洗浄。血圧は110mmHg台まで上昇。
この時点で塩酸ドーパミン8γ(μg/Kg/hr)、ドブタミン8γ(μg/Kg/hr)。
19:00頃 ご主人とコ―ディネータを交え警察から事情聴取。
2月24日
02:00頃 尿量が上昇。
06:00頃 尿量がさらに上昇。
09:00頃 脳波測定 結果は、脳波はほとんど平坦だがVbとはいえないというものCVP4mmHg。
12:00頃 血圧上昇し徐々に昇圧剤減量。尿崩症となる。
14:00頃 ドーパミン、ドブタミン5γずつに減量。
2月25日
01:00頃 血中Na155meq/1ヘ上昇。やはり尿崩症と判断。
グリセオール投与を中止し、腎不全もあったためwash
outする事とする。
08:00 昨日24時間で尿量4120ml。バランス−909ml
09:00頃 脳波測定。
10:54頃 頭部CT撮影。
12:00 平坦脳波Vbと判断し無呼吸テストを含む脳死判定テストを行う。(12:00〜12:50)
14:00頃 西山医師より以下のようにご主人に説明。
1)脳死判定テストを全て満たし脳死の可能性が大きい。
2)CRPが高くなってきており、肺炎になりかけている。
3)脳死下臓器提供の話を聞きたければ、いつでもコ―ディネ―タに連絡するので、聞く気になればいつでも連絡ください。
15:00 家族から移植コ―ディネータの話を聞きたいとの申し入れがあり、移植コ―ディネータヘ電話連絡。
15:43 移植コ―ディネータより家族に対し脳死下での臓器提供に関して説明。(西山医師、婦長同席)
17:55 婦長を呼び、婦長の前で承諾書に記入。
18:40 院長ヘ西山医師から脳死判定の承諾書及び臓器摘出の承諾書を提出。
脳死判定委員会招集。
19:15 脳死判定委員会開催。
20:13 第―回目の脳死判定開始(〜22:30)
脳死判定結果が発表され脳死ではないとの結論に達した。
患者さんのご主人とその兄に脳波判定の結果(Vbとはいえない)を知らせた。
2月26日 血圧は徐々に上昇しドーパミン、ドブタミン2γ(μg/Kg/hr)ずつに減量。
12:00頃 尿量が上昇しwash out出来たため、クレアチニン減少(0.8mg/dl)し、急性腎不全を脱出し、
ピトンシン2単位/時間開始(18時尿量減少で中止)。
12:58 脳波測定開始(〜14:18)
14:48 西山医師よりご主人に「昨日とは異なり、やはり脳波は平坦である。」と説明し、
引き続き無呼吸テストを含め臨床的な脳死の判定をしてみます。」と説明。
16:40 無呼吸テストを含む全てのテストを行い、臨床的に脳死と診断。
西山医師より「脳死と考えられる。コ―ディネータの話を聞くことが出来ます。
聞く気になれば呼んでください。」とご主人に話す。
21:00頃 ご主人から、コ―ディネータの話を聞くと西山医師に申出があり、コーディネータに連絡する。
21:40 コーデイネ―タ3人から西山医師同席の下、御家族に説明。
22:54 脳死判定承諾書及び臓器摘出承諾書に署名。
23:30 病院長に承諾書が提出される。
2月27日
11:12 第二回目脳死判定委員会開催。
11:40 第―回の脳死判定開始。
17:45 第―回の脳死判定終了。
2月28日
01:40 第二回の脳死判定開始。
第二回の脳死判定終了。
- はじめに
本件申立の理由は第2の2「申立の理由」の(1)の「はじめに」に記しているとおり、大きく3点に分けられる。即ち@救命治療の放棄と、A脳死判定手続違反、さらにB脳死に至っていない段階での臓器摘出である。
しかしながら、このうちBについては、カルテ開示・閲覧がなされない以上、臓器摘出時の状況について具体的な事実の確認をなし得ず、また極めて医学的な論争に関わる部分であると思われた。即ち、血圧の上昇が脳幹の活動を意味すると判断できるのか、麻酔ガス投与が当該患者の脳死を否定する事実と評価できるのかについては、具体的な事実を認定できず、医学的にも確定していない論点にも関わる以上、当委員会では人権侵害の有無を判断し得ないとの結論に達した。
- 脳死判定手続違反
次に脳死判定手続違反の点については(1)中枢神経抑制剤の影響の有無を無視して脳死判断を行ったこと、(2)判定に関与できない医師が脳死判定委員会に関与したこと、(3)脳波測定感度を誤っていたこと、(4)無呼吸テストの実施が適正になされなかったことに整理できる。(1)中枢神経抑制剤の影響の軽視
フェノバールビタール投与事実の有無及びその具体的状況については作業班の報告書にも―度投与したとの記載があるだけで、被申立人もこの点に関して具体的な応答をしていない。新聞記事(甲第1号証の3)にその事実の掲載があるが、いまだ争いのない事実として認定することはできないと判断した。また、仮に新聞記事どおりの時期及び回数の投与がなされていたとしても、当該薬剤の影響がどの程度残っていると判断すべきかは困難であって、カルテ等を確認できない委員会としてその相当性を判断することはできないとの結論に達した。
(2)当初の治療に関与した医師の脳死判定委員会への関与
この事実については争いがない。しかし、このことのみをもって即時当該患者に対する人権侵害事実を認めることはできないと判断した。
(3)脳波テストの感度の誤り
本件において脳波測定感度を誤ったことについて当事者間に争いはない。
この点、脳波テスト自体が身体に与える負担程度は比較的小さいこと、また明らかな過失であって訂正がなされていること等からすれば、感度の誤り・脳波テストの増加のみを独立してとりあげ人権侵害の有無を論じるのは適当でないとも考えられるところである。
しかし、他方、このことにより、結果的に、臨床的脳死診断を経ずして法的脳死判定に移行した結果になっており、かつ身体への侵襲程度が強い無呼吸テストを実施する前提条件が満たされていないにも拘らず同テストを行ってしまったことが認められる。
また脳死診断の回数が増えたことにより無呼吸テストの回数自体が増加したことも明らかであるので、無呼吸テストの問題と併せて論じるべきであると判断した。
(4)臨床的脳死診断段階での無呼吸テストの実施、法的脳死判定段階での無呼吸テストの実施順
@無呼吸テストについて
1)無呼吸テストとは何か
わが国は、脳死判定基準を規則2条2項において規定しているが、その要件の一つとして「自発呼吸の消失」を定めている。無呼吸テストは、この自発呼吸の消失を確認するために行われるものである。
具体的には10分間、100%濃度の酸素吸入を行った後、10分間人工呼吸器を外し、その間、100%濃度の酸素を6リットル/分のぺースで気管内チューブを介して流し、血中のPaCO2(二酸化炭素分圧)の上昇程度をみるものである。テスト開始時のPaCO2(二酸化炭素分圧)が基準値の範囲(35水銀柱ミリメートル以上45水銀柱ミリメートル以下)にあることを確かめた上で、二酸化炭素分圧が60水銀柱ミリメートル以上(80水銀柱ミリメートル以下が望ましい)に上昇したことを確認し、それにより、自発呼吸の消失を判断する訳である。
2)無呼吸テストによる人権侵害について
- 無呼吸テストはなんら治療上必要なものではない。
まず大前提として、無呼吸テストは、当該患者にとってなんら治療上必要なものではなく、しかも負担・ダメージを与えるものであることが重要な点である。
- 無呼吸テストの侵襲性、危険性
無呼吸テストは、人工呼吸器を外した上、当該患者の自発呼吸の有無を確認するもめである。したがって、医学文献においても「無呼吸テストはどんどんできるかというとそう簡単ではない」と記載されている。さらに、その理由として、「無呼吸テストを行ってから自発呼吸がもし出現した場合、無呼吸テストの侵襲によって蘇生の可能性をなくしてしまったのではないかという恐怖感が脳死判定者に起きる点と、それにも増して、安全な無呼吸テスト法がどれくらい保障されているか明確な科学的な解説がなされていない」からだとはっきり記されている(「脳蘇生治療と脳死判定の再検討」近代出版)。
また、赤血球のへモグロビンと、酸素の結合を切り離す補因子(エフェクター)であるジホスグリセリン酸が乳酸に変化する危険条件として、血中のpH<7.2という数値が認識されている。つまり血中のpHが7.2以下になると、ヘモグロビンに結合した酸素を各臓器で切り離す赤血球補因子(エフェクター)が減少し、その結果、脳の神経細胞にとって動脈血中の酸素分圧が十分確保されなかったり、一定の時間を超えて長時間無呼吸テストが続行された場合には、たとえPaCO2が正常値にあっても、脳や心臓などの主要臓器の細胞レベルで酸素供給が欠乏するという事態が発生し得る訳である。そして、無呼吸テストの持続時間に対する危険条件について経験例を検討した報告では、無呼吸テスト中動脈血pH<7.2となるのは、5分後で約半数、7分後で約80%とされており、血圧低下、不整脈出現、ショック状態への移行など無呼吸テストに伴う生体侵襲の異常が7分後から急に増加してくることも、この点から合理的に説明されるところである。
ところが他方、6分後に自発呼吸例が出現した例が認められるなど、6分で無呼吸テストを終了すると、6分で終了しなければテスト陰性となった症例を陽性(脳死)と誤認してしまう危険があり、結果的に6分、7分以上の時間をかけてテストを行っている状況にある。
さらに、100%濃度酸素吸入の効果は、赤血球補因子のみならず肺機能によっても影響を受ける。PaCO2/Fio2比<250(動脈血酸素分圧の吸入気酸素濃度に対する比が250未満)の呼吸障害を示す患者は呼吸機能が悪く、脳死判定における無呼吸テストは、かなり危険を伴う検査となる。しかしながら現在、ガイドラインにおいて
「実施を見合わせる患者」として揚げられているのは、「炭素ガスでなく低酸素刺激による呼吸中枢が刺激されているような重症呼吸不全患者」というきわめて抽象的なものであり、結局対象外の判断は現場に任されている。
以上のように無呼吸テストに関わる危険性が種々指摘されていることから、ガイドラインにおいても、「無呼吸テスト中は、血圧計、心電計およびパルスオキシメーターにより循環動態の把握を行い、低血圧、不整脈等の反応が現れた場合には適切な処置を採ることとし、当該テストを継続することについての危険性があると判断された場合には、直ちに当該テストを中止すること」と記載されているのである。
したがって、このテストの危険性を過少評価することは許されないというべきである。
なお、厚生省「脳死に関する研究班」(いわゆる竹内班)も「低酸素血症を来たすと血圧は低下し、徐脈になりやすい。不整脈が発生するときもあるので、無呼吸テスト中は心電図モ二タ―を行う」と述ベ、さらに「無呼吸テストの重要性は高いが、実際の手順としては、他の条件が満たされた後に行うべきである。したがって、判定の最終段階における検査であることを特に強調したい。」と強く述べている。
Aガイドライン等が定める臨床的脳死診断・法的脳死判定における無呼吸テストの位置付け(臨床的脳死診断において無呼吸テストを除いた趣旨、法的脳死判定において無呼吸テストの実施を最後にした趣旨)
前項で述べたとおり、無呼吸テストが身体に対する侵襲性の高いものであり、当該患者に対する治療手段ではないことも明らかである。そのため当該テストについて施行規則・指針に特に規定が定められているのである。
まずその規定の趣旨を確認しておく。
「主治医等が、臨床的に脳死と判断した場合(臓器の移植に関する法律施行規則(平成9年10月8日厚生省令第78号。以下「施行規則」という。)第2条第2項各号の項目のうち第5号の
「自発呼吸の消失」を除く、第1号から第4号までの項目のいずれもが確認された場合。)以後において、家族等の脳死についての理解の状況等を踏まえ、臓器提供に関して意思表示カードの所持等、本人が何らかの意思表示を行っていたかについて把握するよう努めること。」と定めている。つまり臨床的脳死診断においては無呼吸テストを行わない旨明確に定めている。
そして臓器の移植に関する法律施行規則(平成9年10月8日厚生省令第78号)は、第2条3項において、法的脳死判定を行う場合でも、深昏睡、瞳孔散大、脳幹反射の喪失、平坦脳波を確認した後に初めて自発呼吸の消失を確認できる(無呼吸テストが実施できる)と定めている。
かように無呼吸テストの実施について他のテストと比較してはるかに慎重な定めを置いているのは、先に述べたように、同テストの身体に対する侵襲程度が強く、安易に行えば患者の状態を悪化させる危険が存するためである。したがって、これら規定に反して無呼吸テストを行った場合には、単に規定違反になるのではなく、身体への違法な侵襲行為がなされたこととなり、重大な人権侵害が認められる。
すなわちこの両規定によって、まず無呼吸テストを含まない臨床的脳死診断(ガイドラインに定める『臨床的脳死判断』を行い、それをクリアした後ドナーカードの把握に努め、カード等が認められるようであれば法的脳死判定への手続きへと移行していくことが要請される訳である。
そしてこの『臨床的脳死判断』の後になされるドナーカード把握調査の結果、同患者がカードを有していないことがわかった場合は、その後必要に応じ、無呼吸テストを含む臨床的脳死診断が行われる場合もあり得ると解釈すべきである。
つまり脳死の状態に至ったと医療機関が判断した時には、まず、無呼吸テストを含まない、ガイドラインに定める『臨床的脳死判断』を行い、それにより脳死が認められれば、次にドナーカードの把握に努めるという段階を経なければならないと考えるべきである。言い換えれば、ドナーカードの把握に努める前の臨床的脳死診断の際に無呼吸テストを行うべきではないというのが、ガイドラインの定めなのである。
B本件では、甲10の3に記されているとおり、法的脳死判定に先立つ臨床的脳死診断においても、漫然無呼吸テストが繰り返され、法的脳死判定においても無呼吸テストが最後にまわされることはなかった。
被申立人病院において無呼吸テストの危険性が全く認識されていなかったと言わざるを得ない。
C報告書
ところで本件争点について、脳死判定等に係る医学的評価に関する作業班は「第1例目の脳死下での臓器提供に関する医学的評価について」と題する報告書において、法的脳死判定において無呼吸テストが最後に行われなかったことについて不適切と評価しながら、その問題の重要性を論じておらず、また、当該法的脳死判定に先行する臨床的脳死診断において無呼吸テストがなされていることについては黙殺している。かような態度は無呼吸テストの身体への侵襲性、人権侵害性をあまりにも軽視するものである。
D当委員会の結論
当委員会は、ガイドライン等が、無呼吸テストの身体への侵襲程度の強さ、人権侵害程度の強さに鑑みて、ドナーカードの有無を把握する前になされる臨床的脳死診断においては無呼吸テストを除くと明確に定めている(しかも施行規則で法的脳死判定の時でさえ最後に実施すると定めている)にも拘らず、被申立人がその規定を無視し臨床的脳死診断において無呼吸テストを漫然実施し、さらに法的脳死判定においても無呼吸テストの実施順を守っていない点については、勧告を発すぺきであると判断した。
- 救命治療の放棄
(1)本件においては、申立人から、病院到着後の初期対応や手術の非実施等が人権の侵害にあたると主張されているが、被申立人の協力が得られないため、当時の患者の状態につき、詳細な事実経緯を当委員会が把握した上で評価することが困難であるという事情が存する。
また、脳死判定等に係る医学的評価に関する作業班は、「第1例目の脳死下での臓器提供に関する医学的評価について」と題する報告書において、本件の初期診断、治療に関しては問題がないと判断しており、それを覆すに足りるだけの具体的な基礎事実を当委員会としては認定し得ない。
特に、医療行為の選択については患者のその時点ごとの具体的状況に即し裁量の範囲が存在すること、「切迫脳死」という言葉の使われ方だけから人権侵害を認めるのが難しいこと、医療過誤が認められるケースにおいても常に人権侵害が生じているとは判断できないことにも留意されねばならない。
よって、本件争点について、人権侵害の事実を認めることはできないと判断される。
(2)但し、被申立人が面談を拒否し、当該調査への協力に極めて消極的だったことは問題である。我が国において脳死段階での臓器移植に対し根強い反対がある理由の1つとして、言うまでもなく和田移植事件を契機とする臓器移植医療への強い不信感があげられる。
いかなる患者も最後の最後まで最善の医療を受ける権利を有している。にも拘らず脳死段階での臓器移植が認められるようになったことから、その権利を侵害されるのではないかと、かなりの数の国民が不安・疑念を抱いたのである。
したがって、今後は、そのような不安、疑念を払拭すべく、脳死段階での臓器提供の意思を表明していた患者に対し脳死に至るまで病院において最善の救命治療を行うことはもちろんのこと、その治療経過を患者個人のプライバシーに配慮しつつ開示・公開していかねばならない。「判定が臓器確保のために安易に行われるとの不信を生じないよう医療不信の解消および医療倫理の確立に努める」と附帯決議第7項で定めたのも同様の趣旨からである。
(3)したがって、本件争点について人権侵害事実を認定することはできないのであるが、それは被申立人から十分な説明がなされ、疑念が払拭されたというのと同義ではない。
たとえば、手術を行わなかった場合には脳死へと移行するほかなく、少なくともその可能性が極めて高かったというのであるなら、何故手術を行わなかったのかにつき、被申立人には詳細な説明を行う義務が存する筈である。しかしながら、そのような義務は果たされていない。
- 最後に
本件においては、被申立人病院の積極的な協力が得られない中で委員会は検討せざるを得なかった。それゆえ、事実認定に限界があり、かような結論に至ったことを否定できない。
特に、マスコミによる著しく過熱し、適正さを欠いた取材がなされた為、当該ドナーの第二回脳死判定終了(死亡)時間までも非公開になったことは妥当でなかったと考えられるし、日弁連からの調査協力依頼に対し面談自体を拒否することは、他の同種申立案件において医療機関が協力していることと比較しても不当であり、「判定が臓器確保のために安易に行われるとの不信を生じないよう医療不信の解消および医療倫理の確立に努める」との理念にも沿わないと考えられる。
よって委員会としては、今後情報の公開及び説明義務に関し、移植医療に対する信頼を得るため最大限の努力をされるよう、勧告事項とは別個に要望を出すべきであると判断した。
以上の次第であり、脳死判定手続の不遵守(特に無呼吸テストの点)について別紙
「勧告及び要望」記載のとおり勧告を、情報の公開及び事実経緯についての説明義務に関して「勧告及び要望」記載のとおりの要望を出すべきであると判断した次第である。
添付書類
- 甲第1号証の1 高知赤十字病院での臓器提供者に対する救命治療についての意見書
- 甲第1号証の2 判例
- 甲第1号証の3 1999年6月22日付 新聞掲載の高知赤十字病院の「脳死判定に影響の薬物」記事
- 甲第1号証の4 医薬品事典の抜粋
- 甲第2号証 1999年7月14日付 福井医科大学第2内科よりの高知赤十字病院での初期治療についてのメール
- 甲第3号証 平成11年6月21日付の脳死判定等に係る医学的評価に関する作業斑からの
「第1例目の脳死下での臓器提供に関する医学的評価について」の報告書
- 甲第4号証 1999年5月21日付読売新聞掲載記事「高知の脳死臓器提供・救命治療分かれる評価」
- 甲第5号証 ふぇみん1999年3月15日号掲載記事「救命治療は十分だったか」
- 甲第6号証の1,2 朝日新聞掲載記事
- 甲第7号証 草の実誌1999年6月発行掲載「生と死の交叉点で」
- 甲第8号証の1ないし17 1999年読売新聞掲載記事「検証脳死移植」
- 甲第9号証の1ないし28 1999年高知新聞掲載記事「生命のゆくえ(検証・脳死移植)」
- 甲第10号証の1ないし14 新聞掲載記事
- 甲第11号証の1ないし5 雑誌の掲載記事
- 甲第12号証の1 平成9年10月8日付厚生事務次官作成の
臓器の移植に関する法律施行について(依命通知)
- 甲第12号証の2 臓器の移植に関する法律
- 甲第12号証の3 平成9年10月8日付厚生省保健医療局長作成の
臓器移植に関する法律施行規則等の施行について(施行通知)
- 甲第12号証の4 平成9年10月8日付厚生省保健医療局長作成の
臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドライン)の制定について
- 甲第13号証の1 厚生省、厚生科学研究費、特別研究事業、脳死に関する研究班、昭和60年度研究報告書
- 甲第13号証の2 厚生省「脳死に関する研究班」による脳死判定基準の補遺
- 甲第14号証 障害者・保育・教育の総合誌季刊労働1999年8月「専門職の専門性とは」
- 甲第15号証 1999年11月9日付読売新聞ニュース速報
- 甲第16号証 編集 藤井清孝・岡田靖「ブレインアタック・超急性期の脳卒中診療」。
- 甲第17号証の1 平成11年6月21日付公衆衛生審議会疾病対策都会臓器移植専門委員会作成
日本臓器移植ネットワークのあっせん業務に係る評価に関する作業斑中間報告書(案)
- 甲第17台証の2 1999年10月2日付朝日新聞掲載記事「脳死反応 「文書開示を」。高知県に審査会が答申
- 甲第17号証の3 臓器提供に係る対応経過(平成11年2月25日24時現在)
- 甲第17号証の4 脳死による臓器提供を選んだ人への看護のかかわり
- 甲第18号証の1 1999年3月23日付毎日新聞掲載記事「臓器提供の経過公表」
- 甲第18号証の2ないし6 脳死・臓器移植に関する雑誌の掲載記事
- 甲第19号証 1999年4月1日付新聞掲載記事「脳死移植(高知)私はこう見る」
- 甲第20号証 1999年7月5日付朝日新聞掲載記事「脳死移植―脳死判定で相次ぐミス」
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