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臓器移植法見直しをめぐる危ない状況

 

鶴田博之

「脳死」・臓器移植を問う市民れんぞく講座 2000/7/29より 

 

 表記のような論題で(2000/7/29の講座時に)お話しさせていただきました。2000年秋に予定されていた「臓器移植法見直し」について、厚生省の委託による法学者・町野朔の「見直し案」を紹介、批判しながら、「脳死・臓器移植」について改めて私なりに考え、その視点から危惧される状況を確認することが目的でした。あれから時も経ち(2000/11/18)、全く同じことを繰り返すのも無意味なので、ここでは、新たな雑感も交えて記させていただくことにします。

 

 厚生省の意図する「法見直し」は非道だ

 町野教授の見解は、2000年8月に「最終報告」が出ており、これを読むと、厚生省の意図する「法見直し」の非道さがよくわかります。分析すれば、@手続きの非道さ、A内容の非道さ、B論理の非道さ、です。

 まず、@手続きの非道さというのは、「見直し」がこの間の「脳死臓器移植」の実施例を全く考慮していない、ということです。報告書は、「小児臓器移植の実現」を大前提の目的に掲げ、そのための現行法の不備を説いています。しかも、この「検討」が「旧中山案」に含意されていたことを引き合いに出して、法の見直しの方向が法の成立当初から定められていた旨を強調しています。現「臓器移植法」の「見直し」というのは、「この法律の施行の状況を勘案し、その全般について検討が加えられ、・・・」と附則(第2条第1項)にあるように、実施に当たって生じた現実の問題点を検討するのが本来の筋だったはずですが、今回企図されている「見直し」は実施状況の如何に全く関わりなく、始めから、ただただ移植推進のためになされようとするものなのです。                     

 次にA内容の非道さです。町野案が小児からの臓器摘出の合法化を目的としていることは上記の通りで、よく知られてもいます。
その眼目は、
@「脳死判定」には本人の意思表示も家族の同意も不要とする。
A「脳死」を一律に死と定める(現「脳死した者の身体」を「脳死体」と改め、それを「死体」であると明言する)。
B 本人の意思が不明の場合や小児については、家族の同意だけで臓器摘出を可とする。 ・・・といったものですが、
さらに、先々には「臓器一般、さらには組織まで含めた立法にすべきではないか」、「(臓器・組織の)あっせんの営利性をすべて否定すべきか」等々を議論すべきだとも述べています。                          

 圧巻なのは、その「法改定」を正当化しようとする論理の非道さ(B)です。町野によれば、Bを正当化するのは「子どもの場合だけ家族の同意のみで臓器摘出を認めるのは差別だから」という理屈であり、それが現行法の核である「自己決定権」と抵触しないのは、人はすべて「死後の臓器提供へと自己決定している存在」だから、というのです。

 まともな法学者の報告とは思えない無茶苦茶な論理ですが、笑ってばかりはいられません。

町野報告書が示しているのは、論理も手続きも無視してごり押ししなくては一歩も前に進めない移植医療の無理・不自然な本質であり、(「直ちに厚生省の指針となるものではない」とはいいながら)仮にも公式な「最終報告」が出た以上、政府はこの方向でのごり押しを図るしかないからです。刑事処分年齢引き下げを中心とする「少年法」改定が推し進められようとしている今、とりあえず臓器提供意思表示可能の年齢を引き下げる妥協案ぐらいは通ってしまうかもしれません。危惧すべき事態です。

 


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